目次

この記事では、アルミニウム建具の基本的な知識から、種類、特徴、選び方のポイントまで、網羅的に詳しく解説していきます。これから建具の新設や交換を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
■アルミニウム建具とは?基本的な知識を押さえる

軽量でありながら強度が高く、加工性にも優れているため、住宅から高層ビルまで様々な建築物で利用されています。
アルミニウムという素材の特徴

アルミニウムは、私たちの身の回りにある多くの製品に使われている非常にポピュラーな金属です。元素記号は「Al」で、ボーキサイトという鉱石から精錬されます。鉄や銅など他の主要な金属と比較して比重が約3分の1と非常に軽いのが大きな特徴です。この軽さは、製品の軽量化や持ち運びやすさに貢献します。
また、アルミニウムは空気中で酸素に触れると、表面に「酸化皮膜」と呼ばれる非常に薄くて強固な膜を自然に形成します。この酸化皮膜がバリアとなり、内部のアルミニウムがそれ以上錆びるのを防ぐため、優れた耐食性(錆びにくさ)を発揮するのです。
さらに、アルミニウムは加工しやすい性質も持っています。熱を加えると比較的容易に溶け、様々な形に鋳造したり、薄く延ばしたり、複雑な形状に押し出して成形したりすることができます。この加工性の高さも、多様なデザインのアルミニウム建材商品が作られる理由の一つです。
建具におけるアルミニウムの役割
建具の材料としてアルミニウムが広く採用されるようになった背景には、その優れた特性が大きく関わっています。かつて建具の主流であった木製建具は、自然な風合いや断熱性といったメリットがある一方で、湿度による変形や腐食、シロアリ被害などの課題がありました。また、鉄製建具は強度が高いものの、重くて錆びやすいというデメリットがありました。
そのような中で登場したアルミニウム建具は、まず錆びにくく耐久性が高いという点で、特に雨風にさらされる屋外の窓やドアに適していました。また、軽量であるため、大きな窓でも開閉がスムーズで、建物への構造的な負担も軽減できます。精密な加工が可能であることから、枠と可動部の隙間を少なくでき、気密性を高めやすいという点も、冷暖房効率の向上や防音性の確保に貢献しました。
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■アルミニウム建具の主な種類と用途
アルミニウム建具は、その汎用性の高さから、建物の様々な場所で利用されています。ここでは代表的な種類とその用途について見ていきましょう。
窓(引き違い窓、FIX窓、すべり出し窓など)
窓は、アルミニウム建具が最も多く利用される代表的な場所です。
「引き違い窓」は、2枚以上の窓ガラスを左右にスライドさせて開閉する、日本では非常になじみ深いタイプです。操作が簡単で、開口部の大きさを調整しやすいのが特徴です。
「FIX窓(はめ殺し窓)」は、開閉できない固定された窓で、主に採光や眺望を目的として設置されます。気密性が高く、大きなガラス面を取りやすいため、開放的な空間を演出できます。
「すべり出し窓」は、窓枠の上下または左右の溝に沿って、外側へ滑り出すように開く窓です。気密性が高く、雨が降っていても少し開けて換気できるタイプもあります。
この他にも、上下にスライドする「上げ下げ窓」や、内側に倒して開く「内倒し窓」など、設置場所や用途に応じて様々な種類のアルミニウム製窓が選ばれています。
ドア(玄関ドア、勝手口ドア、室内ドア)

室内ドアにもアルミニウムが使われることがあります。特にガラスを組み合わせたスタイリッシュなデザインのものは、モダンなインテリアによく合います。
引戸(室内引戸、店舗用引戸など)

上吊り式にすれば床にレールが不要になり、バリアフリーにも対応しやすくなります。
その他(門扉、フェンス、手すり、間仕切りなど)

例えば、住宅の入り口を飾る門扉や、敷地の境界を示すフェンス、バルコニーや外階段の安全を守る手すりなどです。これらは屋外で使用されるため、アルミニウムの錆びにくさや耐久性が特に重要になります。また、オフィスや商業施設では、空間を柔軟に仕切るための「間仕切り(パーティション)」にもアルミニウム製のものが多く使われており、軽量で施工が容易な点が評価されています。
■アルミニウム建具のメリットを徹底解説
アルミニウム建具がこれほどまでに広く採用されているのには、多くの優れた理由があります。ここでは、その主なメリットについて、一つひとつ詳しく見ていきましょう。
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耐久性が高く錆びにくい点
アルミニウム建具の最大のメリットの一つは、その優れた耐久性、特に錆びにくさにあります。
アルミニウムは、空気中の酸素と反応して表面に非常に薄い「酸化アルミニウム(アルミナ)」の膜を自然に形成します。この酸化皮膜は非常に緻密で安定しており、まるでコーティングのようにアルミニウム本体を保護し、さらなる酸化(錆び)の進行を防ぎます。
このため、常に雨風や紫外線にさらされる屋外の窓やドア、門扉といった用途においても、長期間にわたって美観と機能を保つことができます。
軽量で開閉がスムーズな点
アルミニウムは、鉄や銅といった他の主要な金属材料と比較して、比重が約3分の1と非常に軽い金属です。この「軽さ」は、アルミニウム建具において多くの利点をもたらします。例えば、大きな窓やドアであっても、開閉操作がスムーズで軽快になります。力の弱いお子さんやお年寄りの方でも、楽に開け閉めできるのは日々の暮らしにおいて大きなメリットと言えるでしょう。
また、建具自体が軽量であるため、建物全体の構造にかかる負荷を軽減することにも繋がります。これは特に、開口部が大きい建物や、耐震性を考慮する際に有利な点です。施工時においても、軽量であることは運搬や取り付け作業の負担を減らし、作業効率の向上に貢献します。
加工しやすくデザインの自由度が高い点

また、アルミニウムの表面には、アルマイト処理(陽極酸化処理)や塗装といった様々な表面処理を施すことができます。これにより、シルバーだけでなく、ブロンズ、ブラック、ホワイトといった多彩なカラーバリエーションを実現したり、木目調のデザインを施したりすることもできます。
コストパフォーマンスに優れる点
アルミニウム建具は、初期費用と長期的なメンテナンス費用を考慮すると、コストパフォーマンスに優れた選択肢と言えます。アルミニウムは地殻中に豊富に存在する元素であり、リサイクルも進んでいるため、原材料としての価格が比較的安定しています。
また、耐久性が高く錆びにくいため、頻繁な交換や大規模な修繕の必要性が少なく、長期的に見るとメンテナンスコストを低く抑えることができます。
気密性を確保しやすい点
建具における気密性とは、枠と可動部分(窓ガラスやドア本体など)の隙間から空気がどれだけ漏れにくいかを示す性能のことです。気密性が高い建具は、室内の冷暖房効率を高め、エネルギー消費を抑えることに貢献します。また、外部からの騒音の侵入を軽減したり、ホコリや花粉の侵入を防いだりする効果も期待できます。
アルミニウムは、精密な寸法で加工することが容易なため、枠と可動部の隙間を小さく設計することができます。さらに、気密材(パッキンなど)と組み合わせることで、より高い気密性能を発揮するアルミニウム建具が作られています。
■知っておきたいアルミニウム建具のデメリットと対策
多くのメリットがあるアルミニウム建具ですが、一方でいくつかのデメリットも存在します。ここでは、主なデメリットとその具体的な対策について詳しく解説していきます。
断熱性が低く結露しやすい点と断熱対策
アルミニウム建具の代表的なデメリットとしてよく挙げられるのが、断熱性の低さです。アルミニウムは金属であるため、熱を伝えやすい性質(熱伝導率が高い)を持っています。これにより、冬場には室内の暖かい空気が窓枠を通じて外部へ逃げやすく、夏場には外部の熱気が室内に伝わりやすくなります。
しかし、これらの課題に対しては様々な対策が講じられています。代表的なものとしては、「サーマルブレイク構造(熱遮断構造)」の採用があります。これは、窓枠の室内側と室外側のアルミニウム部材の間に、熱を伝えにくい樹脂製の断熱材を挟み込むことで、熱の移動を遮断する構造です。また、ガラス部分には、2枚のガラスの間に空気層やアルゴンガスを封入した「複層ガラス」や、特殊な金属膜をコーティングして断熱性能を高めた「Low-E(ローイー)ガラス」を使用することも非常に効果的です。
デザインが画一的になりやすい点とデザイン性の高い製品
アルミニウム建具は、そのシャープで近代的な質感が特徴ですが、時に「冷たい印象」、「無機質」、「デザインが画一的」といった声も聞かれます。特に、木製建具が持つ温かみや豊かな表情と比較すると、デザインのバリエーションに物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、近年のアルミニウム建具はデザイン面でも大きく進化しています。表面処理技術の向上により、単なるシルバーやブロンズだけでなく、マットな質感のものや、多彩なカラーバリエーションが展開されています。木目調のラッピングシートを施すことで、アルミニウムでありながら木の温もりを感じさせるデザインの製品も増えています。
塩害地域では腐食の可能性がある点と対策
アルミニウムは基本的に錆びにくい金属ですが、海岸近くの「塩害地域」では注意が必要です。塩害地域とは、海水に含まれる塩分が風によって運ばれ、建物や金属製品に付着しやすい地域のことです。アルミニウムの表面にある保護的な酸化皮膜も、塩化物イオン(塩分)に長時間さらされると破壊され、孔食(こうしょく)と呼ばれる点状の腐食が発生しやすくなります。これが進行すると、アルミニウム建具の美観を損なうだけでなく、強度低下の原因となることもあります。
このような塩害地域でアルミニウム建具を使用する場合は、特別な対策が必要です。まず、製品選びの際には「耐塩害仕様」の表面処理が施されたものを選ぶことが重要です。通常のアルマイト処理よりも皮膜を厚くしたり、耐食性の高い塗料で塗装したりするなどの対策が取られています。
また、設置後のメンテナンスも非常に大切です。建具の表面に付着した塩分を定期的に水で洗い流すなど、こまめな清掃を心がけることで、腐食の進行を遅らせることができます。
■アルミニウム建具を選ぶ際の重要なポイント
いざアルミニウム建具を選ぼうとしても、種類や機能が多くてどれを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。ここでは、後悔しない建具選びのために、押さえておくべき重要なポイントを具体的に解説していきます。
アルミニウムに関する専門用語 - ALMETAX STORE
必要な性能(断熱性・防音性・防犯性)の確認
アルミニウム建具には、JIS(日本産業規格)によって様々な性能基準が定められています。
例えば、断熱性(H等級)、気密性(A等級)、水密性(W等級)、耐風圧性(S等級)、遮音性(T等級)などがあり、これらの等級が高いほど性能が良いことを示します。
住んでいる地域や住環境、ライフスタイルによって、どの性能を重視するかは異なります。
例えば、寒冷地であれば高い断熱性が、交通量の多い道路沿いの家であれば高い遮音性が求められるでしょう。また、空き巣被害が心配な場合は、防犯ガラスの採用や、CPマーク(防犯性能の高い建物部品に付けられるマーク)が付いた製品を選ぶと安心です。
デザインとカラーの検討

建物全体のデザインコンセプト(モダン、和風、洋風など)や、壁の色、床材、家具などとの調和を考えて選びましょう。アルミニウム建具のカラーバリエーションは豊富で、定番のシルバーやブロンズ系から、シックなブラック、明るいホワイト、さらには木目調などもあります。枠の太さや形状によっても印象は変わります。シャープでスリムな枠はモダンな印象を与え、ある程度太さのある枠は重厚感を演出します。
予算と価格帯の把握
アルミニウム建具の価格は、製品のサイズ、種類、機能、デザイン、そしてメーカーによって大きく異なります。一般的に、高機能なもの(例えば、断熱性能が高い、防犯機能が付いているなど)や、デザイン性の高いものは価格が高くなる傾向があります。
まずは、建具にかけられる予算の上限を大まかに決めておきましょう。その上で、複数のメーカーの製品を比較したり、リフォーム業者に見積もりを依頼したりして、おおよその価格帯を把握することが大切です。見積もりを取る際には、製品本体の価格だけでなく、取り付け工事費や既存建具の撤去・処分費なども含めた総費用で比較するようにしましょう。
メーカーや製品の信頼性確認
長く安心して使用するためには、信頼できるメーカーの製品を選ぶことも重要なポイントです。実績のあるメーカーは、品質管理がしっかりしており、製品の性能も安定していることが多いです。
また、万が一不具合が発生した場合のアフターサービスや保証制度が充実しているかどうかも確認しておきましょう。製品保証の期間や内容、修理対応の窓口などを事前に調べておくと安心です。
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■まとめ
アルミニウム建具は、その優れた耐久性、軽量性、加工性、そしてコストパフォーマンスの高さから、私たちの暮らしに欠かせない建材の一つとして、窓やドアをはじめとする多くの場所で活用されています。
この記事で紹介したアルミニウム建具のメリット・デメリット、種類、選び方のポイント、そしてメンテナンス方法などを参考にしていただき、ご自身の住まいやライフスタイルに最適な製品を見つけてください。