アルミ建材の種類を徹底解説!特徴や選び方のポイントも紹介
2025/ 06/ 16

アルミ建材の種類を徹底解説!特徴や選び方のポイントも紹介

アルミ建材
私たちの身の回りには、住宅の窓サッシからビルの外壁、さらには乗り物や日用品に至るまで、アルミニウムという金属が幅広く活用されています。特に建築分野においては、「アルミ建材」としてその軽さや加工のしやすさ、優れた耐久性から非常に重要な役割を担っています。
しかし、一口にアルミ建材と言っても、実は多種多様な「アルミ建材 種類」が存在することをご存知でしょうか?

この記事では、そんな奥深いアルミ建材の世界にご案内します。基本的なアルミニウムの特性から、具体的なアルミ建材の種類とその特徴、さらにはメリット・デメリット、そして建材を選ぶための比較ポイントまで、網羅的に解説していきます。

これからリフォームや新築、DIYでアルミ建材の利用を検討している方はもちろん、アルミ建材についてより深く知りたいという方にも、きっと役立つ情報が見つかるはずです。

 

アルミ建材とは?基本的な特徴を理解する

アルミ建材のイメージ

アルミ建材について詳しく見ていく前に、まずはその素材であるアルミニウムがどのような金属なのか、基本的な特徴を押さえておきましょう。アルミニウムの特性を理解することは、アルミ建材の種類ごとの違いや利点を把握する上で非常に重要です。

 

軽量で加工しやすいアルミニウムの特性

アルミ缶

アルミニウムの最も際立った特徴の一つは、その「軽さ」です。比重は約2.7で、これは鉄(約7.8)や銅(約8.9)と比較して約1/3という驚くべき軽さです。この軽量性は、建材として使用する際に大きなメリットをもたらします。

さらに、アルミニウムは非常に加工しやすい金属でもあります。切断、曲げ、溶接、押し出しといった様々な加工方法に対応でき、複雑な形状や精密な寸法の製品を作り出すことが可能です。この加工性の高さは、デザインの自由度を高め、多様な建築ニーズに応えることを可能にしています。また、アルミニウムはリサイクル性に優れており、少ないエネルギーで再生できるため、環境負荷の低減に貢献するサステナブルな素材としても注目されています。

 

アルミ建材が持つ耐食性と耐久性

アルミニウムは、酸素と結合しやすく、空気に触れると表面に緻密で安定した酸化皮膜を自然に形成します。この酸化皮膜が保護層となり、内部のアルミニウムを腐食から守るため、非常に優れた「耐食性」を発揮します。いわゆる「錆びにくい」という特性です。このため、雨風にさらされる屋外や湿気の多い場所でも長期間にわたって美観を保ち、性能を維持することができます。

特に、陽極酸化処理(アルマイト処理)などの表面処理を施すことで、この耐食性をさらに向上させることが可能です。これにより、沿岸地域など塩害が懸念される環境や、厳しい気象条件下でも安心して使用できる「耐久性」の高いアルミ建材が実現します。メンテナンスの手間がかかりにくい点も、アルミ建材が広く採用される理由の一つと言えるでしょう。

 

熱伝導率の高さと注意点

アルミニウムは熱を伝えやすい、つまり「熱伝導率が高い」という性質も持っています。これは、調理器具やヒートシンク(熱交換器の一種)など、熱を効率よく伝えたい製品にとっては大きなメリットとなります。しかし、建材として使用する際には、この特性がデメリットとして働く場面も考慮しなければなりません。

例えば、外壁や窓サッシにアルミ建材をそのまま使用すると、夏場は外の暑さが室内に伝わりやすく、冬場は室内の暖かさが外に逃げやすくなる可能性があります。これにより、冷暖房の効率が低下し、エネルギー消費量が増えてしまうことも考えられます。そのため、アルミ建材を断熱性が求められる箇所に使用する場合は、断熱材と組み合わせたり、樹脂などの熱を伝えにくい素材と組み合わせた複合製品(例:アルミ樹脂複合サッシ)を選んだりするなど、適切な断熱対策を施すことが重要です。

特徴を活かし、苦手を克服するアルミニウム - ALMETAX STORE

特性 詳細 建材としての影響(メリット・注意点)
軽量性 鉄の約1/3の軽さ 運搬・施工が容易、建物の耐震性向上
加工性 切断、曲げ、押し出しなどが容易 デザインの自由度が高い、複雑な形状に対応可能
耐食性 表面に保護的な酸化皮膜を形成し錆びにくい 屋外での使用に適している、メンテナンスが容易
耐久性 長期間性能を維持できる 過酷な環境下でも使用可能(表面処理により向上)
熱伝導率 熱を伝えやすい 断熱性が求められる箇所では対策が必要(断熱材との併用など)
リサイクル性 少ないエネルギーで再生可能 環境負荷が低いサステナブルな素材

 

アルミ建材の主な種類と用途

アルミ建材を加工している作業員
アルミニウムは、その優れた特性から多様な形状に加工され、様々なアルミ建材として建築物のあらゆる場所で活躍しています。ここでは、代表的なアルミ建材の種類と、それぞれの主な用途について詳しく見ていきましょう。


押出形材(アングル・チャンネル・パイプ)の種類と用途

アルミパイプ
押出形材とは、加熱したアルミニウムの塊(ビレット)を金型(ダイス)から押し出して成形される建材のことです。金型の形状を変えることで、複雑な断面形状の製品を連続的に製造できるのが特徴です。代表的なものに、L字型のアングル、コの字型のチャンネル、そして円形や角形のパイプがあります。

アングルは、主に建築物や構造物の補強材として使われます。チャンネルは、梁や柱といった構造材の補助や、パネル材のフレーム、配線カバーなど幅広い用途で活躍します。パイプは、手すりやフェンス、テントのフレーム、さらには装飾的な部材としても利用されるなど、その用途は多岐にわたります。これらの押出形材は、軽量でありながら一定の強度を持つため、建築現場での取り扱いやすさと機能性を両立させています。


板材(アルミパネル・アルミ複合板)の種類と用途

アルミ板材は、文字通り板状に加工されたアルミ建材で、建築物の外装や内装、屋根材などに広く用いられます。代表的なものに、一枚のアルミ板であるアルミパネルと、アルミニウムと他の素材(主に樹脂)を組み合わせたアルミ複合板があります。

アルミパネルは、その軽量性と加工性の良さから、曲面加工や複雑なデザインの外壁材として人気があります。また、耐食性が高いため、屋外での使用にも適しています。一方、アルミ複合板は、薄いアルミニウム板の間に低密度の芯材(ポリエチレンなど)を挟んだサンドイッチ構造をしています。これにより、軽量でありながら高い剛性と平滑性を実現し、大型の壁面パネルや看板、店舗の内外装材として優れた性能を発揮します。

 

サッシ・ドアに使われるアルミ建材

サッシに使われているアルミ建材
住宅やビルの窓枠(サッシ)やドアは、アルミ建材が多く利用されている分野の一つです。アルミサッシやアルミドアは、軽量で開閉がスムーズであること、高い寸法精度で気密性を確保しやすいこと、そして錆びにくく耐久性に優れていることが大きな特徴です。

古くから日本の住宅で広く採用されてきたアルミサッシですが、近年では断熱性能の向上が課題とされてきました。そのため、枠の内部に断熱材を充填し、熱を伝えにくい樹脂と組み合わせたアルミ樹脂複合サッシや、さらに断熱性を高めたオール樹脂サッシなども登場しています。

しかし、アルミ形材のシャープな質感や強度、耐久性、そして比較的安価であるというメリットから、依然として多くの建物でアルミ製のサッシやドアが選ばれています。デザインのバリエーションも豊富で、建物の外観やインテリアに合わせて様々なスタイルを選ぶことができます。


その他の特殊なアルミ建材(鋳物・鍛造品など)

上記以外にも、特殊な製法で作られるアルミ建材があります。例えば、アルミニウム合金を溶かして型に流し込んで成形する「鋳物」は、複雑な形状や装飾的なデザインの製品を作るのに適しています。門扉やフェンス、バルコニーの手すり、照明器具の筐体などに利用され、独特の風合いと重厚感を演出します。

また、アルミニウム合金に圧力を加えて成形する「鍛造品」は、組織が緻密になり強度が高まるため、高い強度が求められる部品に使用されます。建築分野では、特殊な接合部品や構造部材の一部などに採用されることがあります。これらの特殊なアルミ建材は、一般的な押出形材や板材では対応できない特定のニーズに応えるために重要な役割を果たしています。

アルミ建材の種類 主な形状・特徴 主な用途例
押出形材(アングル) L字型の断面 補強材
押出形材(チャンネル) コの字型の断面 構造材補助、フレーム材、配線カバー
押出形材(パイプ) 円形、角形などの管状 手すり、フェンス、テントフレーム、装飾材
板材(アルミパネル) 一枚のアルミ板 外壁材、内装材、屋根材、曲面加工部材
板材(アルミ複合板) アルミ板と芯材(樹脂など)のサンドイッチ構造
軽量・高剛性・平滑
大型壁面パネル、看板、店舗内外装材
サッシ・ドア用建材 複雑な断面形状、気密性・水密性確保 住宅・ビルの窓枠
ドア(玄関ドア、勝手口ドア、間仕切りドアなど)
鋳物 溶融金属を型に流し込み成形
複雑な形状や装飾が可能
門扉、フェンス、手すり、照明器具筐体、装飾部材
鍛造品 金属に圧力を加えて成形、高強度 特殊な接合部品、高強度が求められる構造部材

 

【合金別】アルミ建材に使われる代表的なアルミニウム合金

アルミニウムのイメージ
アルミ建材の性能は、ベースとなるアルミニウムにどのような元素を添加するか(合金化するか)によって大きく変わります。ここでは、JIS規格などで分類されているアルミニウム合金の番手(シリーズ)の中から、特に建材としてよく利用される代表的なアルミニウム合金について、その特徴と主な用途を解説します。

1000番台(純アルミニウム系)の特徴と用途

1000番台は、純度99.00%以上の純アルミニウム系の合金です。アルミニウム本来の特性である加工性、耐食性、導電性、熱伝導性に優れています。強度は他の合金に比べて低いですが、その分、曲げ加工や深絞り加工などが容易に行えます。

建材としては、その優れた反射性を活かして照明器具の反射板や、厨房設備の表面材、あるいは装飾的な用途で使われることがあります。また、加工しやすいため、複雑な形状の押出形材の一部や、放熱部品などにも利用されます。代表的な合金としてはA1050やA1100があります。

5000番台(マグネシウム系)の特徴と用途

5000番台は、マグネシウム(Mg)を主要な添加元素とする合金です。中程度の強度を持ち、耐食性、特に海水環境に強いのが大きな特徴です。また、溶接性も良好なため、構造部材として溶接して使用されることも多い合金です。

建材分野では、その優れた耐食性を活かして船舶や車両の部材のほか、沿岸地域の建築物の外装材、屋根材、貯蔵タンクなどに使用されます。また、強度と加工性のバランスも良いため、一般的な板金加工品やパネル類にも広く採用されています。代表的な合金には、A5052(中程度の強度で最も一般的な合金)、A5083(溶接構造用として高い強度を持つ)などがあります。

6000番台(マグネシウム・ケイ素系)の特徴と用途

6000番台は、マグネシウム(Mg)とケイ素(Si)を添加した合金で、強度、耐食性、加工性のバランスに優れています。特に押出加工性に優れており、複雑な断面形状の形材を効率よく製造できるため、建築用アルミ形材の代表的な材料として広く普及しています。

T5処理やT6処理といった熱処理(時効硬化処理)を施すことで強度を高めることができます。主な用途は、アルミサッシやドアの枠材、カーテンウォール、手すり、構造材など、建築分野で最も目にする機会の多いアルミニウム合金と言えるでしょう。代表的な合金には、A6061(中程度の強度を持ち、耐食性も良好)、そして建築用サッシの代表格であるA6063(優れた押出性と耐食性、良好な表面処理性を持つ)があります。

7000番台(亜鉛・マグネシウム系)の特徴と用途

7000番台は、亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)を主要添加元素とし、銅(Cu)を含むものもある、アルミニウム合金の中で特に高い強度を持つグループです。熱処理によって極めて高い強度が得られますが、一般的に耐食性は他の合金に比べて劣る傾向があり、応力腐食割れに対する注意も必要です。

その高い強度から、航空機やロケットの構造部材、スポーツ用品(例:スキーのストック、ジュラルミンケース)などに使用されます。建材としての用途は限定的ですが、特殊な高強度が求められる構造部材や、衝撃のかかる場所などに部分的に使用されることがあります。代表的な合金としては、超々ジュラルミンとも呼ばれるA7075があります。

 合金系統 (番手) 主要添加元素 代表的な合金 主な特徴 主な建材用途例
1000番台 (純アルミ系)
なし (純Al)
A1050, A1100
高い加工性、耐食性、導電性、熱伝導性。強度は低い。
照明反射板、厨房設備、装飾材、放熱部品
5000番台 (Al-Mg系) マグネシウム (Mg) A5052, A5083 中程度の強度、優れた耐食性(特に耐海水性)、良好な溶接性。 船舶・車両部材、建築外装材(沿岸部)
屋根材、貯蔵タンク、板金加工品
6000番台 (Al-Mg-Si系) マグネシウム (Mg), ケイ素 (Si) A6061, A6063 強度・耐食性・加工性のバランス良好
優れた押出性、熱処理により強度向上。
アルミサッシ、ドア、カーテンウォール
手すり、構造材(最も一般的)
7000番台 (Al-Zn-Mg系) 亜鉛 (Zn), マグネシウム (Mg) A7075 アルミニウム合金中特に高い強度。耐食性はやや劣る傾向。 航空機部材、高強度構造部材(特殊用途)
スポーツ用品(建材用途は限定的)

 

アルミ建材のメリットとは?

アルミ建材がこれほどまでに広く採用されているのには、他の素材にはない多くの優れたメリットがあるからです。ここでは、アルミ建材が持つ代表的なメリットについて、具体的にどのような利点があるのかを解説します。これらのメリットを理解することで、なぜ多くの場面でアルミ建材が選ばれるのかが明確になるでしょう。


圧倒的な軽さがもたらす施工性と耐震性

アルミ建材の最大のメリットは、その「軽さ」です。鉄の約1/3という比重は、建材として使用する際に多くの恩恵をもたらします。まず、軽量であるため運搬や現場での取り扱いが非常に容易になり、作業員の負担軽減や工期の短縮に繋がります。高所での作業や大型部材の取り付けも比較的安全に行えるようになります。

さらに重要なのが、建物の耐震性向上への貢献です。建物全体の重量が軽くなることで、地震発生時の揺れによる建物の負担を軽減できます。特に、屋根材や外壁材といった建物の高い位置に使用する部材を軽量化することは、重心を低くし、建物の安定性を高める上で非常に効果的です。

優れた加工性によるデザインの自由度

アルメタックスストアのハンガーバー
アルミニウムは、切断、曲げ、溶接、押出成形など、様々な方法で比較的容易に加工できる金属です。この「加工性の高さ」は、建築デザインの自由度を大きく広げます。複雑な曲線を持つ外装パネルや、繊細なデザインのサッシ枠、あるいは特注の装飾部材など、設計者の意図を反映した多様な形状の建材を作り出すことが可能です。

また、表面処理のバリエーションも豊富で、アルマイト処理による多彩な着色や、木目調などのテクスチャを施すこともできます。これにより、機能性だけでなく意匠性にも優れたアルミ建材が生まれ、建物の美観向上に大きく貢献します。

高い耐食性でメンテナンスが容易

アルメタックスストアの布団干しバー
アルミニウムは、空気中の酸素と反応して表面に緻密で安定した酸化皮膜を自然に形成します。この皮膜が保護層となり、内部の金属を腐食から守るため、非常に「高い耐食性」を発揮します。いわゆる「錆びにくい」という特性です。これにより、雨風にさらされる屋外や湿度の高い場所でも長期間にわたり美観や性能を維持できます。

この優れた耐食性のおかげで、アルミ建材は塗装などの定期的なメンテナンスの頻度を減らすことができ、維持管理コストの削減にも繋がります。特にアルマイト処理などの表面処理を施すことで、さらに耐食性や耐摩耗性を向上させることができ、より過酷な環境下でも長期間安心して使用することが可能です。

リサイクル可能で環境に優しい素材

アルミニウムはリサイクル性に非常に優れた金属です。使用済みのアルミ製品を回収し、溶解して再生地金を作る際に必要なエネルギーは、新しいアルミニウムをボーキサイトから製錬する場合に比べて、わずか3%程度で済むと言われています。これは、地球温暖化の原因となるCO2排出量の大幅な削減に繋がり、環境負荷の低減に大きく貢献します。

建築物は何十年という長期間にわたって使用されるため、その解体時に発生する廃棄物の処理も重要な課題です。アルミ建材は、高いリサイクル率を誇り、繰り返し再生利用できるため、持続可能な社会の実現に向けた「環境に優しい素材」として、その価値がますます高まっています。

環境にやさしいアルミニウム - ALMETAX STORE

メリット 具体的な内容と利点
軽量性 鉄の約1/3の軽さ。運搬・施工が容易で作業効率向上。
建物全体の軽量化により耐震性向上に貢献。
加工性 切断、曲げ、押出成形などが容易。
複雑な形状やデザインに対応可能で、設計の自由度が高い。
表面処理のバリエーションも豊富。
耐食性 表面に保護的な酸化皮膜を形成し錆びにくい。
屋外や湿度の高い場所でも長期間性能を維持。
メンテナンス頻度を低減し、維持管理コスト削減に貢献。
リサイクル性 再生に必要なエネルギーが少なく、CO2排出量削減に貢献。
高いリサイクル率で繰り返し利用可能。
持続可能な社会に適した環境負荷の低い素材。

 

アルミ建材のデメリットと注意点

多くのメリットを持つアルミ建材ですが、万能というわけではありません。いくつかのデメリットや使用上の注意点も存在します。
これらを事前に理解しておくことで、適切な対策を講じたり、他の素材との比較検討をより深く行ったりすることができます。ここでは、アルミ建材の主なデメリットと、それらに対する注意点について解説します。


他の素材と比較した場合のコスト

一般的に、アルミ建材は鋼材などの他の金属建材と比較して、材料自体の「コストが高い」傾向があります。特に、高純度なものや特殊な合金、複雑な加工が施された製品の場合は、その価格差が大きくなることもあります。初期費用を抑えたい場合には、この点がデメリットと感じられるかもしれません。

ただし、コストを考える際には、初期費用だけでなく、耐久性やメンテナンス性を含めたライフサイクルコストで比較検討することが重要です。アルミ建材は耐食性に優れ、長持ちするため、長期的には塗装の塗り替え費用や交換費用が抑えられる場合もあります。予算と求める性能、そして長期的な視点を持って、総合的に判断する必要があります。


強度面で鉄鋼に劣るケースとその対策

アルミニウムの強度は、一般的な鉄鋼材料と比較すると低い傾向があります。単位重量あたりの強度(比強度)は高いのですが、同じ断面積で比較すると、引張強さやヤング率(変形のしにくさを示す指標)は鉄鋼に及びません。そのため、大きな荷重がかかる構造部材や、高い剛性が求められる部分に使用する際には、「強度不足」にならないよう注意が必要です。

対策としては、強度を高めたアルミニウム合金(例:7000番台)を選定する、部材の断面形状を工夫して剛性を高める(例:中空構造にする、リブを設ける)、あるいは鉄骨など他の高強度な素材と適切に組み合わせるなどの方法が考えられます。

 

傷つきやすさとその対策

マットな仕上げのアルミ建材
アルミニウムは比較的柔らかい金属であるため、表面に「傷がつきやすい」というデメリットがあります。特に、鏡面仕上げや光沢のある表面処理を施したものは、擦り傷や打痕が目立ちやすい傾向があります。運搬時や施工時の取り扱いには十分な注意が必要です。

対策としては、表面硬度を高めるアルマイト処理を厚めに施したり、傷が目立ちにくいマットな仕上げ(梨地など)を選んだりする方法があります。


断熱性確保のための工夫

アルミニウムは熱を伝えやすい、つまり熱伝導率が高い金属です。これは、放熱部品などにはメリットとなりますが、建材として使用する際には、特に外気に接する部分(外壁、窓サッシなど)において「断熱性の低さ」が問題となることがあります。夏は外の熱が室内に伝わりやすく、冬は室内の暖気が外へ逃げやすくなるため、冷暖房効率の低下を招く可能性があります。

この対策として、窓サッシの場合は、アルミ形材の間に熱を伝えにくい樹脂を挟んだ「熱橋(ヒートブリッジ)」対策を施した製品や、アルミと樹脂を組み合わせた複合サッシ、あるいは断熱性能の高い樹脂サッシや木製サッシを選ぶことが推奨されます。

デメリット・注意点 内容と課題 対策・考慮事項
コスト 一般的に鋼材などと比較して材料費が高い傾向がある。
初期費用が嵩む場合がある。
ライフサイクルコスト(耐久性、メンテナンス性を含む)で比較検討する。
予算と性能のバランスを考慮する。
強度 同じ断面積では鉄鋼に比べて強度が低い場合がある。
大きな荷重がかかる箇所では注意が必要。
高強度合金の選定、断面形状の工夫、
他の高強度素材との組み合わせなど、
適切な構造設計を行う。
傷つきやすさ 表面が比較的柔らかく、擦り傷や打痕がつきやすい。
光沢仕上げは特に目立ちやすい。
表面硬度を高める処理(厚膜アルマイト)、
傷が目立ちにくい仕上げの選択、
保護材の使用、取り扱い時の注意。
断熱性 熱伝導率が高く、外気に接する部分では断熱性能が低い。
冷暖房効率の低下を招く可能性がある。
断熱材との組み合わせ、熱橋対策を施した製品の選択、
アルミ樹脂複合サッシや高断熱サッシの採用など、
適切な断熱設計を行う。

 

アルミ建材を選ぶ際の比較ポイント

多種多様な種類があるアルミ建材の中から、自分の目的や用途に最適なものを選ぶためには、いくつかの比較ポイントを押さえておくことが重要です。

ここでは、アルミ建材を選ぶ際に特に注目したい比較ポイントを解説します。

 

使用目的と必要な性能の明確化

まず最も重要なのは、「何のために、どこにアルミ建材を使用したいのか」という使用目的を明確にすることです。例えば、意匠性を重視する外壁なのか、強度が必要な構造部材なのか、あるいは開閉のしやすさが求められる窓サッシなのかによって、重視すべき性能は大きく異なります。

具体的には、耐食性、強度、断熱性、防音性、加工性、デザイン性、メンテナンス性といった項目について、どの性能を優先するのか、どの程度のレベルが必要なのかを整理しましょう。使用目的が明確になれば、数あるアルミ建材の中から候補を絞り込みやすくなります。

 

設置場所の環境条件の考慮

アルミ建材を設置する場所の環境条件も、選定における重要なポイントです。例えば、沿岸部で潮風にさらされる場所であれば、特に高い耐食性が求められるため、5000番台の合金や厚めのアルマイト処理が施された製品が適しています。一方、寒冷地であれば、断熱性能の高いサッシや、凍害に強い表面処理が重要になります。

その他にも、日射量が多い場所では耐候性の高い塗装、交通量の多い場所では防音性能、積雪地域では耐荷重性能など、設置場所特有の条件を考慮し、それに適した性能を持つアルミ建材を選ぶ必要があります。専門家にも相談しながら、最適な仕様を決定しましょう。

 

予算とライフサイクルコストのバランス

建材選びにおいて予算は避けて通れない要素です。アルミ建材の価格は、種類、サイズ、合金の種類、表面処理、メーカーなどによって大きく異なります。まずは初期費用としてどれくらいの予算を割けるのかを明確にしましょう。

ただし、前述の通り、初期費用だけで判断するのではなく、メンテナンス費用や将来的な交換費用まで含めた「ライフサイクルコスト」で考えることが賢明です。初期費用が多少高くても、耐久性が高くメンテナンスフリーに近い製品であれば、長期的にはコストを抑えられる可能性があります。耐久性、耐用年数、メンテナンスの頻度や方法なども確認し、予算と長期的なコストパフォーマンスのバランスを考慮して選びましょう。

 

デザイン性と意匠性の確認

アルミを使用した室内ドアのイメージ

アルミ建材は、色、形状、質感など、デザインのバリエーションが非常に豊富です。建物の外観や内装全体の雰囲気に調和するか、あるいはアクセントとして機能するかなど、デザイン性や意匠性は空間の質を大きく左右します。

カタログやサンプルだけでなく、可能であれば実際の施工事例なども参考にしながら、イメージに合うものを選びましょう。表面の仕上げ(マット、光沢、ヘアライン、木目調など)や、カラーバリエーション、形状の自由度などを比較検討します。特に、サッシやドア、外壁材などは建物の顔となる部分ですので、じっくりと時間をかけて選びたいポイントです。

 比較ポイント 確認・検討すべき具体的な事項
使用目的と必要な性能 何のためにどこに使用するのか(壁、屋根、サッシ、構造材など)。
重視する性能(耐食性、強度、断熱性、防音性、デザイン性、メンテナンス性など)とそのレベルを明確化する。
設置場所の環境条件 屋内か屋外か。沿岸部、寒冷地、多雨地域、日射量、交通量、積雪など、
設置場所特有の環境条件(塩害、凍害、紫外線、騒音、荷重など)を考慮し、
適切な耐候性・耐久性を持つものを選ぶ。
予算とライフサイクルコスト 初期費用の上限。材料費だけでなく、加工費、施工費も考慮する。
メンテナンスの頻度・費用、耐用年数、将来的な交換費用を含めた
トータルコストで比較検討する。
デザイン性と意匠性 建物の外観や内装との調和、またはアクセントとしての効果。
色、形状、質感、表面仕上げ(マット、光沢、木目調など)、
カラーバリエーション、加工の自由度などを確認し、
イメージに合うものを選ぶ。実際の施工事例も参考にする。

 

まとめ

この記事では、多岐にわたる「アルミ建材 種類」とその特徴、メリット・デメリット、そして選ぶ際の比較ポイントについて詳しく解説してきました。アルミ建材は、その軽量性、加工性、耐食性といった優れた特性により、私たちの暮らしの様々な場面で活躍する非常に汎用性の高い素材です。

それぞれのアルミ建材が持つ特性を深く理解し、使用目的や設置環境、予算、そしてデザイン性を総合的に比較検討することで、あなたのプロジェクトに最適な一品を見つけることができるでしょう。適切なアルミ建材を選ぶことは、快適で安全、そして美しい空間を実現するための重要な第一歩となります。